トイレの水が流れないという最悪の事態

トイレに入っていて最悪な事態というのは「紙」がないことです。だれだって「大きい方」でトイレに入るときは、まずなんにつけ「紙」を確認するのではないでしょうか。
しかしトイレで起きるもうひとつの悲劇があるのをみなさんはご存知でしょうか。それは入った瞬間にはまず気がつかないことなのですが、ひととりことが終わったあとに起こる、まさにほぼ防ぎようのない悲劇です。

トイレの悲劇、それは「トイレの水が流れないこと」です。わたしがこの悲劇に見舞われたときは一瞬パニックに襲われたあと、なにも考えられなくなりました。そこはとても小さな飲み屋の男女共同のトイレでしたから、仮にそのままにしてわたしが出てしまった場合、ほぼ間違いなく次に入った人間の目に触れることになり、「それ」がわたしのものだと認識されてしまうでしょう。

そもそも飲み屋のトイレにある程度の時間入っていること自体、かなり「危険」な状況です。
「あれ?あいついねーぞ」「トイレいったのか?長くねーか」といった具合です。それが優しいやつならば、わたしが飲みすぎて気持ち悪くなったのではないかと心配してくれるかもしれませんが、そんな優しさすらも、このままわたしがトイレを出て「事が発覚」したなら、たとえ水が流れなかったということを訴えても、それは無駄なあがきになるでしょう。

こんなことを考えながら、トレイの水タンクのレバーをガチャガチャと動かし続けるわたしは、そのタンクの蓋が外せることに気がついたのです。
中を覗き込むと、タンクに水がほとんどたまっていませんでした。おそらくボールタップの作動不良で給水が上手くいっていないのでしょう。一応止水弁を確認しましたが、確かに開いています。
あまり綺麗な場所ではないので、脇にあったトイレの芳香剤のビンを使ってボールタップをつつくと、突然給水蛇口から水が出てタンクに入り始め、そのあとは水がたまるのを待って無事流すことができました。